chapter 3

今年の夏は終わっても悲しくなかった。まだ終わってないのかな、それすらわからないくらいには季節が曖昧になっている。 「夏の終わりは僕たちをおかしくさせる薬なんです。駄目なんです。汚れることが美しいと教えてくれた紫の夜明け前。」なんて歌に救われ…

it's hollow. だった

私はいまきっと好きなんだろうと思う仕事についている。好きなことを仕事にするなんてこと夢にも思っていなかった。高校時代、私は本を読むのが好きだから本に関係する仕事につきたかった。絵を描くのが好きだから絵に関係する仕事につきたかった。音楽が好…

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「いつ告白してくれるんですか」まだ朝晩の冷え込みに冬の名残りを感じるような季節にそう言われてから数ヶ月が経った。気づいたらその頃の寒さのことを忘れて、これからの暑さのことばかり考えている。 13km、それが近いのか遠いのかいまいちわからなかった…

泣くことしか知らない

「私はこんな人間やから、嫌やったら離れていいよ」と言われたのは5年前の今日、そんなことを思い出したのは先日、私がはじめて行ったラブホテル--LOVEを見たからだと思う。近くにいたのでちょっと見ておこう、と軽い気持ちで行っただけなのに、余計な記…

点と点の夜のはなし

私はライブハウスが苦手だ。だってうるさいし臭いし人がたくさんいるんだもの。でも懲りずにライブハウスへ出向いてしまう、それはいつだって不意の思いつきのようなものだった。YouTubeなんかで知らない人たちの曲を聴いたりして"なんかいいな"と思ったそ…

よく知っている、知らない街

私が初めて行ったラブホテルは谷町九丁目にあるLOVEという名前のところだった。名前は安直な名前だからかしっかりと覚えているのに、外観は全く思い出したことがなかった。以前にも何度かLOVEへ行ったことを思い出したことがあったけれど――例えば病院の待合…

理由もなくさみしい人たち

今年はよく「桜ノ宮も桜が綺麗らしいよ」という話を聞いた。今年の春はその話を4回も聞いた。その度に「あ、聞いたことある、綺麗らしいね」と答える。私にとって桜の季節のそのような会話の中で「桜ノ宮の桜が綺麗だった」と言う人が居ないことだけが救い…

それは未練ではなく

例えば、たとえばの話。痛みや傷痕に伴っていだく「愛しい」という感覚が、痛みや傷痕が消えてしまったとき、その感覚の寄りそう場所がなくなったときにこそ大きくなればいいなと思うような日もあって、そもそも痛みや傷痕を作ってしまったことが間違いだっ…

確か梅雨があけた頃だった

「新居を探すからついてきて」と言うからついていった。私はそのときはじめて大国町という街に行ったけど、難波の隣駅、歩いて10分もかからないとても近いところなのにどこか遠くまで来てしまった気持ちだった。その人は出会い系サイトを介して以前にただ一…