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「いつ告白してくれるんですか」まだ朝晩の冷え込みに冬の名残りを感じるような季節にそう言われてから数ヶ月が経った。気づいたらその頃の寒さのことを忘れて、これからの暑さのことばかり考えている。

 

13km、それが近いのか遠いのかいまいちわからなかったけど「近くの遠く」と言うのがぴったりだと思った。その人は四月ちゃんと名乗っていた。一月でも二月でも何月でもなく、四月だったから会った。
いまだに恋人のどこが好きかと聞かれてもうまく答えられない。それでもどうして会ったのかと聞かれると「近くの遠くにいて四月だったから」と答える。他の誰に理解されなくても私にとっては立派な答えだと思うし、恋人もその感覚をわかってくれそうな気がする。


ひさしぶりに文章書きたいんだけど何書こう、と聞いてみると「双子みたいな彼女の話」と言った。双子みたいというのは、私たちは物事の考え方や捉え方が本当に似ているから。
お互いに本を読むことも映画をみることも音楽を聴くことも好き、ただその好きなものはてんでばらばらだ。でもそのバラバラの点を無理に繋げようとしないところ、点は点でそのまま置いておくところ、そういう考え方が似ているし、たとえば「その青色、赤くない?」と言えば私の意図する意味で感じ取ってくれる。「旬の食べ物を食べたときに感じるほんの小さな幸せみたいな暖かさ」と言えばちゃんとその暖かさをイメージしてくれる。言葉や表現での相違がない。最終的に出した解答が違うことがあっても、そこにたどり着くまでの思考が同じだった。
何かを話そうとしたときに、ちょうど同じ瞬間に同じ話をしてしまう以心伝心してしまっているようなこともよくある。そういう部分ぜんぶひとまとめにして、双子みたい。


「好きな数字、何?」と聞いたら「7」と即答だった。ちょうどそのとき6日から7日になったばかりの夜で、少し笑ってしまった。じゃあ今日ね、と私たちの記念日は7日になった。
私はこうした記念日だとか何月何日が何の日だとか、そういった日付に意味を持たせることが苦手だった。ただただ季節をありのままの季節として捉えていたかったし、これまでそうしてきたのだけれど、今は何だかカレンダーの日付に甘えるのも良いかもしれないなと思い始めている。
ひとつひとつの日付をコーラルピンクに染めてみたり、水色だったり黄色にしてみたり。そうしているうちにただひたすらに並び続ける数字が書かれたページに愛着のような感情を抱くようになった。コーラルピンクの量で愛おしくなったり、寂しくなったりする。


きっと私は同じ感覚を同じように共有していたいんだと思う。江國香織の「うんとお腹をすかせてきてね」じゃないけれど、同じ物をたべて同じように身体がつくられて、同じようなこと考えながら同じ季節を暮らして。
これからはじまる夏が楽しみな一方でとても不安で仕方ないことも、不安で仕方ないけれどずっと続いてほしいということも、それらの想いが私のひとりよがりではなくて、誰かの心の中でも生きていてくれたらいいな。


4ヶ月記念日は幸か不幸か七夕になるね。うんとお腹をすかせて、会いましょう。暗くて明るいこれからの夏の話。